当科の研究

当科の研究について

当科では、治療応用を目的とした問題解決型研究、基礎と臨床の双方向的研究、エビデンスの創出と発信をモットーに、“社会へ貢献できる外科研究”を目標として、診療科一丸となり研究に取り組んでいます。上部消化管外科、下部消化管外科それぞれで研究テーマを設定し、臨床研究、基礎研究に従事しています。研究グループでのウィークリー・リサーチカンファレンスに加え、総合外科全体における大学院セミナーや定期的な研究会を行うことにより、質の高い研究推進に努めています。また、得られた研究成果は、国内外での学会発表、さらには質の高い国際誌において論文発表できるよう、努力しています。

上部消化管外科

研究の背景

食道がんは他の消化器がんと比べ発症率は高くないものの、5年生存率は40-50%と予後不良な悪性腫瘍です。また胃がんは5年生存率は60-70%と治療成績は比較的良好なものの、本邦では依然として死亡数、罹患数ともに多い疾患であり、共にさらなる予後の改善が求められる疾患と言えます。さらなる予後および治療成績の改善を目指して、基礎研究、臨床研究をさらに充実させ、新たな治療の開発も積極的に行っていく必要があると考えています。

上部消化管 主な研究テーマ一覧

臨床研究食道がん患者における慢性炎症と骨格筋量減少の関連についての研究
食道がん患者における治療前握力と化学療法、化学放射線治療の成績との関連
胸部食道がん対するDCF-RTの長期成績
切除不能進行再発食道がんに対するDNF療法の有効性に関する検討
食道胃接合部がんの臨床病理学的特徴の解析および治療戦略の検討
食道がんにおけるFAMT-PET診断の有用性に関する研究
切除不能進行・再発食道扁平上皮癌に対するNivolumab療法の治療成績と安全性、治療効果予測バイオマーカーに関する検討
進行・再発胃がんに対するNivolumab療法の治療成績とその臨床病理学的特徴の検討
上部胃癌および食道胃接合部癌に対する内視鏡外科手術におけるリンパ節郭清手技及び再建法の現状とQOLを含めた長期成績の検討
術後気道壊死に関する全国実態調査
生理機能から見たハイリスク胃癌患者に対する胃全摘の適応
サーモグラフィー を用いた胃管血流評価と術後縫合不全に関する検討
進行胃癌に対する内視鏡外科手術の周術期成績の現状および予後因子の検討
食道癌手術症例における口腔内衛生状況と治療成績に関する検討
胃癌および食道胃接合部癌に対するICG蛍光ナビゲーション併用腹腔鏡下手術の有用性に関する研究
上部消化管癌患者における体脂肪量・筋肉量の意義に関する研究
切除不能胃癌に対する化学療法および集学的治療の治療成績と予後予測因子の検討
後期高齢者のリンパ節郭清範囲についての現況調査と周術期リスクや予後との関連性の検討
食道癌リンパ節転移予測の指摘cut-off値、指標に関する検討
DELICATE study (Duodenal stump leakage after gastrectomy for gastric cancer: a multicenter retrospective study)
胃癌術後十二指腸断端縫合不全に関する多施設調査
NCD研究:術前腎機能が食道切除術後短期成績に与える影響についての検討
NCD研究:National Clinical Databaseを利用した残胃癌手術における低侵襲手術の実態および合併症リスク因子の検討
基礎研究ニボルマブ治療進行胃癌患者における腫瘍免疫応答の生物学的変化に関する研究
PET検査を利用した食道がん局所免疫状態の評価に関する研究
食道類基底細胞がんの発がん起源に関する研究
放射線照射と腫瘍免疫に関する研究
成犬を用いた肥満手術における消化管運動と生理活性物質の解析
上部消化管癌におけるlipopolysaccharidesの存在と免疫チェックポイント阻害剤治療抵抗性に関する研究
食道扁平上皮癌におけるTIF1γの発現意義の解析
食道扁平上皮癌におけるPlastin-3発現の意義
消化管癌におけるオルガノイド研究
胃癌間質におけるTGFBIを標的とした新規癌治療戦略の開発

研究内容

食道扁平上皮癌におけるTIF1γの発現意義と機能の解明

TIF1γはTRIMタンパクファミリーの一つで、Ring-fingerドメインを有し、E3ユビキチンリガーゼとしての機能が知られています。TIF1γはTGF-βシグナルにおいて、Smad4をモノユビキチン化し、Smad2/3と結合することでシグナル制御に関与しています。TGF-βシグナルは癌の発生や進展に重要な役割を果たしていることから、腫瘍形成におけるTIF1γの役割に注目が集まっています。TIF1γは癌腫により機能や発現の程度は異なりますが、食道癌においてはTIF1γに関する報告がこれまでありません。当科における研究では、我が国で約90%の組織型を占める食道扁平上皮癌に焦点を当て、TIF1γの発現意義とその機能を明らかにすることを目的とし、検討を行っています。

上部消化管癌における癌細胞内のlipopolysaccharide (LPS)の存在と、免疫チェックポイント阻害剤治療抵抗性の解析

◎胃癌組織内のLPSの存在 

◎仮説

成犬を用いた消化管運動の解析

われわれは伝統的に、成犬にフォーストランスデューサーを装着し(図1)、消化管運動や消化管ホルモンの研究に従事し、発表してきました。具体的には、幽門側胃切除術において迷走神経腹腔枝を温存すると十二指腸以下の消化管運動およびインスリン分泌が保持されることや、シスプラチンによる消化管異常収縮に対する六君子湯の抑制効果とグレリンの関係、またInterdigestive migrating contractions (IMC)に着目し(図2)、PhaseⅢ(強収縮)を誘発するモチリンはグレリンにより作用拮抗されることなどを発表してきました。現在は確立した実験形態や設備・環境を活かし、肥満手術における消化管運動と生理活性物質の解析研究などを行っています。

図1

図2

下部消化管外科

研究の背景

下部消化管領域においては大腸がんを中心に小腸がん、炎症性腸疾患、肛門良性疾患、腹壁疾患などの治療に従事しています。我が国において依然としてがんによる死亡率は増加しており、死因のトップになっています。全国がん登録(2016年)では、大腸がんの罹患者数は各種がんのなかで1位であり、死亡者数においても2位となっています。小腸がんは稀ではありますが、早期発見が困難であり進行した状態で発見されることが多いがんです。また近年、炎症性腸疾患の罹患者数は増加の一途を辿っており治療が必要な患者さんの数は増える一方です。このような下部消化管領域の疾患に対して診断、治療を行うだけでなく、さらなる治療成績の向上を目指して過去の治療成績の検討を行ない、新たな治療方法の検討・開発を行っております。またこれらの疾患は病態が未だ解明されていない部分も多く、より深い病態の解明と新規の治療標的の発見が待たれています。こうした様々な課題に対して全国規模の多施設共同研究や当科独自の基礎研究や臨床研究に取り組んでおります。

下部消化管 主な研究テーマ一覧

臨床研究再発危険因子を有するハイリスクStageII結腸がん 治癒切除例に対する術後補助化学療法としての mFOLFOX6療法またはXELOX療法の至適投与期間 に関するランダム化第III相比較臨床試験(JFMC-48- 1301-C4:ACHIEVE-2 Trial)  
腹腔鏡下直腸癌術後性機能障害に関する多施設前向 き観察研究 (the LANDMARC Study) 
ストーマ周囲皮膚障害をはじめとしたストーマ関連合併症の発症時期および頻度に関する多施設共同前向き観察研究 
直腸癌手術における適切なCircumferential resection margin (CRM)とDistal Margin (DM) に関する多施設前向き観察研究 
BRAF 変異型大腸癌に対するBRAF 阻害薬併用療法 のバイオマーカー探索を含めた観察研究 (BEETS 試験) 
大腸癌の治療に対する医療画像技術の有用性と安全性に関する検討  
局所進行大腸癌に対する治療成績と予後予測因子の検討  
転移再発大腸癌に対する外科治療を含めた集学的治療の治療成績の検討  
小腸癌に対する治療成績と予後予測因子の検討  
鼠径部ヘルニアに対する腹臥位鼠径部除圧下CTの有用性に関する検討  
直腸癌の術前MRI画像と病理評価や分子マーカーに関する研究  
大腸癌術後機能に関するアンケート調査    
病理学的壁深達度T4大腸癌根治手術症例における腫瘍サイズと予後の検討  
小腸・大腸神経内分泌腫瘍に対する治療成績と予測因子の検討  
経肛門アプローチ併用直腸悪性腫瘍手術における短期治療成績の検討  
局所進行直腸癌における側方リンパ節郭清の検討  
大腸がん手術症例における腹壁瘢痕ヘルニアの発症リスク因子の検討  
高齢大腸癌症例の術後癌薬物療法の有効性と安全性の検討  
直腸癌の病理学的側方リンパ節転移と関連する術前因子の検討  
閉塞性大腸癌症例における術前栄養状態と術後短期合併症の検討  
直腸悪性腫瘍手術における経肛門アプローチ併用の有無と治療成績の検討  
大腸腫瘍術後の癒着性腸閉塞の検討  
横行結腸癌に対する腹腔鏡下手術の有用性の検討  
緊急手術時の消化管ストーマ造設に伴う手術手技 と治療成績の検討  
炎症性腸疾患に対する治療成績と予後予測因子の検討  
高齢大腸癌症例の予後に関連する術後筋肉量減少 とその要因  
扁平上皮癌および管内型・管外型肛門管癌の治療成績の検討  
基礎研究colitic cancerにおける免疫関連タンパクの発現意義の検討  
大腸癌におけるスタスミン(STMN)ファミリーの発現意義の解析  
大腸癌における腫瘍免疫と関連する分子生物学的因子の検討 
大腸癌におけるL-type amino acid transporter 1 (LAT1) 発現と予後、治療抵抗性の検討
大腸癌におけるβアドレナリン受容体発現と化学療法への影響の解明  

研究内容

Colitic cancerにおけるDNA2重鎖切断修復に伴うシグナル発現の解析

Colitic cancerは炎症性腸疾患などの慢性粘膜炎症により発生する稀な大腸がんです。通常の大腸がんとは発がん機序が異なり、慢性炎症によるDNA損傷の蓄積が関与すると報告されています。DNA損傷の一つにDNA 2重鎖切断があります。我々はDNA 2重鎖切断によって誘導されるシグナルに着目し、Colitic cancerにおけるDNA 2重鎖切断の重要性(発がんメカニズムや治療効果への影響)について検討しています。これまでに、炎症性腸疾患におけるDNA修復機構と免疫チェックポイント蛋白(PD-L1)発現の関係性や、免疫細胞の組織内浸潤に関わる接着分子、抗原提示分子の研究を行ってきました。

②大腸がんにおけるLAT1発現の意義と機能解析

がん細胞の増殖には糖やアミノ酸が不可欠であり、必須アミノ酸の細胞内への輸送はアミノ酸輸送体であるL-type amino acid transporter (LAT)などが担っています。LATの中で、正常細胞ではLAT2がアミノ酸輸送を担い、悪性腫瘍では腫瘍特異的なLAT1が過剰発現してアミノ酸を輸送します。LAT1高発現が予後不良因子となることは複数のがん種で報告され、当科でも大腸がんにおいて研究し報告してきました。一方でLAT1発現と化学療法抵抗性に関しての報告は散見されますが、特に大腸がんにおけるLAT1発現と化学療法抵抗性の関連は明らかとなっていません。当科では大腸がん化学療法のキードラッグであるオキサリプラチンやカペシタビン、5-FUなどを中心にLAT1発現と化学療法抵抗性の研究を進めております。さらにLAT1と分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤との関連の解析も検討しております。

オルガノイド培養技術を用いた消化器がん・消化器疾患の個別化医療法の開発

日本人の死亡原因の第一位はがんであり、その数は増加傾向にあります。人類は100年以上がんという疾患と戦ってきましたが、未だに根治法は確立されていません。当科では、がん患者由来の組織から直接培養する技術であるオルガノイド培養法を取り入れ、患者ごとに適した治療法(個別化医療法)の確立を目指します。当科では群馬大学生体調節研究所・粘膜エコシステム制御分野(佐々木 伸雄 教授)との共同研究として、当科で治療を受けた消化器がん・消化器疾患の患者様から診断および治療上不都合の無いように組織を採取し、オルガノイド培養を行い、がん細胞に見られる遺伝的な変化(genotype)とその環境に対する応答によって生じる形質(phenotype)を統合した解析を進めています。

当科で樹立した大腸癌オルガノイドの一例

当科の研究について

当科では、治療応用を目的とした問題解決型研究、基礎と臨床の双方向的研究、エビデンスの創出と発信をモットーに、“社会へ貢献できる外科研究”を目標として、診療科一丸となり研究に取り組んでいます。上部消化管外科、下部消化管外科それぞれで研究テーマを設定し、臨床研究、基礎研究に従事しています。研究グループでのウィークリー・リサーチカンファレンスに加え、総合外科全体における大学院セミナーや定期的な研究会を行うことにより、質の高い研究推進に努めています。また、得られた研究成果は、国内外での学会発表、さらには質の高い国際誌において論文発表できるよう、努力しています。

上部消化管外科

研究の背景

食道がんは他の消化器がんと比べ発症率は高くないものの、5年生存率は40-50%と予後不良な悪性腫瘍です。また胃がんは5年生存率は60-70%と治療成績は比較的良好なものの、本邦では依然として死亡数、罹患数ともに多い疾患であり、共にさらなる予後の改善が求められる疾患と言えます。さらなる予後および治療成績の改善を目指して、基礎研究、臨床研究をさらに充実させ、新たな治療の開発も積極的に行っていく必要があると考えています。

上部消化管 主な研究テーマ一覧

臨床研究食道がん患者における慢性炎症と骨格筋量減少の関連についての研究
食道がん患者における治療前握力と化学療法、化学放射線治療の成績との関連
胸部食道がん対するDCF-RTの長期成績
切除不能進行再発食道がんに対するDNF療法の有効性に関する検討
食道胃接合部がんの臨床病理学的特徴の解析および治療戦略の検討
食道がんにおけるFAMT-PET診断の有用性に関する研究
切除不能進行・再発食道扁平上皮癌に対するNivolumab療法の治療成績と安全性、治療効果予測バイオマーカーに関する検討
進行・再発胃がんに対するNivolumab療法の治療成績とその臨床病理学的特徴の検討
上部胃癌および食道胃接合部癌に対する内視鏡外科手術におけるリンパ節郭清手技及び再建法の現状とQOLを含めた長期成績の検討
術後気道壊死に関する全国実態調査
生理機能から見たハイリスク胃癌患者に対する胃全摘の適応
サーモグラフィー を用いた胃管血流評価と術後縫合不全に関する検討
進行胃癌に対する内視鏡外科手術の周術期成績の現状および予後因子の検討
食道癌手術症例における口腔内衛生状況と治療成績に関する検討
胃癌および食道胃接合部癌に対するICG蛍光ナビゲーション併用腹腔鏡下手術の有用性に関する研究
上部消化管癌患者における体脂肪量・筋肉量の意義に関する研究
切除不能胃癌に対する化学療法および集学的治療の治療成績と予後予測因子の検討
後期高齢者のリンパ節郭清範囲についての現況調査と周術期リスクや予後との関連性の検討
食道癌リンパ節転移予測の指摘cut-off値、指標に関する検討
DELICATE study (Duodenal stump leakage after gastrectomy for gastric cancer: a multicenter retrospective study)
胃癌術後十二指腸断端縫合不全に関する多施設調査
NCD研究:術前腎機能が食道切除術後短期成績に与える影響についての検討
NCD研究:National Clinical Databaseを利用した残胃癌手術における低侵襲手術の実態および合併症リスク因子の検討
基礎研究ニボルマブ治療進行胃癌患者における腫瘍免疫応答の生物学的変化に関する研究
PET検査を利用した食道がん局所免疫状態の評価に関する研究
食道類基底細胞がんの発がん起源に関する研究
放射線照射と腫瘍免疫に関する研究
成犬を用いた肥満手術における消化管運動と生理活性物質の解析
上部消化管癌におけるlipopolysaccharidesの存在と免疫チェックポイント阻害剤治療抵抗性に関する研究
食道扁平上皮癌におけるTIF1γの発現意義の解析
食道扁平上皮癌におけるPlastin-3発現の意義
消化管癌におけるオルガノイド研究
胃癌間質におけるTGFBIを標的とした新規癌治療戦略の開発

研究内容

食道扁平上皮癌におけるTIF1γの発現意義と機能の解明

TIF1γはTRIMタンパクファミリーの一つで、Ring-fingerドメインを有し、E3ユビキチンリガーゼとしての機能が知られています。TIF1γはTGF-βシグナルにおいて、Smad4をモノユビキチン化し、Smad2/3と結合することでシグナル制御に関与しています。TGF-βシグナルは癌の発生や進展に重要な役割を果たしていることから、腫瘍形成におけるTIF1γの役割に注目が集まっています。TIF1γは癌腫により機能や発現の程度は異なりますが、食道癌においてはTIF1γに関する報告がこれまでありません。当科における研究では、我が国で約90%の組織型を占める食道扁平上皮癌に焦点を当て、TIF1γの発現意義とその機能を明らかにすることを目的とし、検討を行っています。

上部消化管癌における癌細胞内のlipopolysaccharide (LPS)の存在と、免疫チェックポイント阻害剤治療抵抗性の解析

◎胃癌組織内のLPSの存在 

◎仮説

成犬を用いた消化管運動の解析

われわれは伝統的に、成犬にフォーストランスデューサーを装着し(図1)、消化管運動や消化管ホルモンの研究に従事し、発表してきました。具体的には、幽門側胃切除術において迷走神経腹腔枝を温存すると十二指腸以下の消化管運動およびインスリン分泌が保持されることや、シスプラチンによる消化管異常収縮に対する六君子湯の抑制効果とグレリンの関係、またInterdigestive migrating contractions (IMC)に着目し(図2)、PhaseⅢ(強収縮)を誘発するモチリンはグレリンにより作用拮抗されることなどを発表してきました。現在は確立した実験形態や設備・環境を活かし、肥満手術における消化管運動と生理活性物質の解析研究などを行っています。

図1

図2

下部消化管外科

研究の背景

下部消化管領域においては大腸がんを中心に小腸がん、炎症性腸疾患、肛門良性疾患、腹壁疾患などの治療に従事しています。我が国において依然としてがんによる死亡率は増加しており、死因のトップになっています。全国がん登録(2016年)では、大腸がんの罹患者数は各種がんのなかで1位であり、死亡者数においても2位となっています。小腸がんは稀ではありますが、早期発見が困難であり進行した状態で発見されることが多いがんです。また近年、炎症性腸疾患の罹患者数は増加の一途を辿っており治療が必要な患者さんの数は増える一方です。このような下部消化管領域の疾患に対して診断、治療を行うだけでなく、さらなる治療成績の向上を目指して過去の治療成績の検討を行ない、新たな治療方法の検討・開発を行っております。またこれらの疾患は病態が未だ解明されていない部分も多く、より深い病態の解明と新規の治療標的の発見が待たれています。こうした様々な課題に対して全国規模の多施設共同研究や当科独自の基礎研究や臨床研究に取り組んでおります。

下部消化管 主な研究テーマ一覧

臨床研究再発危険因子を有するハイリスクStageII結腸がん 治癒切除例に対する術後補助化学療法としての mFOLFOX6療法またはXELOX療法の至適投与期間 に関するランダム化第III相比較臨床試験(JFMC-48- 1301-C4:ACHIEVE-2 Trial)  
腹腔鏡下直腸癌術後性機能障害に関する多施設前向 き観察研究 (the LANDMARC Study) 
ストーマ周囲皮膚障害をはじめとしたストーマ関連合併症の発症時期および頻度に関する多施設共同前向き観察研究 
直腸癌手術における適切なCircumferential resection margin (CRM)とDistal Margin (DM) に関する多施設前向き観察研究 
BRAF 変異型大腸癌に対するBRAF 阻害薬併用療法 のバイオマーカー探索を含めた観察研究 (BEETS 試験) 
大腸癌の治療に対する医療画像技術の有用性と安全性に関する検討  
局所進行大腸癌に対する治療成績と予後予測因子の検討  
転移再発大腸癌に対する外科治療を含めた集学的治療の治療成績の検討  
小腸癌に対する治療成績と予後予測因子の検討  
鼠径部ヘルニアに対する腹臥位鼠径部除圧下CTの有用性に関する検討  
直腸癌の術前MRI画像と病理評価や分子マーカーに関する研究  
大腸癌術後機能に関するアンケート調査    
病理学的壁深達度T4大腸癌根治手術症例における腫瘍サイズと予後の検討  
小腸・大腸神経内分泌腫瘍に対する治療成績と予測因子の検討  
経肛門アプローチ併用直腸悪性腫瘍手術における短期治療成績の検討  
局所進行直腸癌における側方リンパ節郭清の検討  
大腸がん手術症例における腹壁瘢痕ヘルニアの発症リスク因子の検討  
高齢大腸癌症例の術後癌薬物療法の有効性と安全性の検討  
直腸癌の病理学的側方リンパ節転移と関連する術前因子の検討  
閉塞性大腸癌症例における術前栄養状態と術後短期合併症の検討  
直腸悪性腫瘍手術における経肛門アプローチ併用の有無と治療成績の検討  
大腸腫瘍術後の癒着性腸閉塞の検討  
横行結腸癌に対する腹腔鏡下手術の有用性の検討  
緊急手術時の消化管ストーマ造設に伴う手術手技 と治療成績の検討  
炎症性腸疾患に対する治療成績と予後予測因子の検討  
高齢大腸癌症例の予後に関連する術後筋肉量減少 とその要因  
扁平上皮癌および管内型・管外型肛門管癌の治療成績の検討  
基礎研究colitic cancerにおける免疫関連タンパクの発現意義の検討  
大腸癌におけるスタスミン(STMN)ファミリーの発現意義の解析  
大腸癌における腫瘍免疫と関連する分子生物学的因子の検討 
大腸癌におけるL-type amino acid transporter 1 (LAT1) 発現と予後、治療抵抗性の検討
大腸癌におけるβアドレナリン受容体発現と化学療法への影響の解明  

研究内容

Colitic cancerにおけるDNA2重鎖切断修復に伴うシグナル発現の解析

Colitic cancerは炎症性腸疾患などの慢性粘膜炎症により発生する稀な大腸がんです。通常の大腸がんとは発がん機序が異なり、慢性炎症によるDNA損傷の蓄積が関与すると報告されています。DNA損傷の一つにDNA 2重鎖切断があります。我々はDNA 2重鎖切断によって誘導されるシグナルに着目し、Colitic cancerにおけるDNA 2重鎖切断の重要性(発がんメカニズムや治療効果への影響)について検討しています。これまでに、炎症性腸疾患におけるDNA修復機構と免疫チェックポイント蛋白(PD-L1)発現の関係性や、免疫細胞の組織内浸潤に関わる接着分子、抗原提示分子の研究を行ってきました。

②大腸がんにおけるLAT1発現の意義と機能解析

がん細胞の増殖には糖やアミノ酸が不可欠であり、必須アミノ酸の細胞内への輸送はアミノ酸輸送体であるL-type amino acid transporter (LAT)などが担っています。LATの中で、正常細胞ではLAT2がアミノ酸輸送を担い、悪性腫瘍では腫瘍特異的なLAT1が過剰発現してアミノ酸を輸送します。LAT1高発現が予後不良因子となることは複数のがん種で報告され、当科でも大腸がんにおいて研究し報告してきました。一方でLAT1発現と化学療法抵抗性に関しての報告は散見されますが、特に大腸がんにおけるLAT1発現と化学療法抵抗性の関連は明らかとなっていません。当科では大腸がん化学療法のキードラッグであるオキサリプラチンやカペシタビン、5-FUなどを中心にLAT1発現と化学療法抵抗性の研究を進めております。さらにLAT1と分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤との関連の解析も検討しております。

オルガノイド培養技術を用いた消化器がん・消化器疾患の個別化医療法の開発

日本人の死亡原因の第一位はがんであり、その数は増加傾向にあります。人類は100年以上がんという疾患と戦ってきましたが、未だに根治法は確立されていません。当科では、がん患者由来の組織から直接培養する技術であるオルガノイド培養法を取り入れ、患者ごとに適した治療法(個別化医療法)の確立を目指します。当科では群馬大学生体調節研究所・粘膜エコシステム制御分野(佐々木 伸雄 教授)との共同研究として、当科で治療を受けた消化器がん・消化器疾患の患者様から診断および治療上不都合の無いように組織を採取し、オルガノイド培養を行い、がん細胞に見られる遺伝的な変化(genotype)とその環境に対する応答によって生じる形質(phenotype)を統合した解析を進めています。

当科で樹立した大腸癌オルガノイドの一例

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Department of General Surgical Science, Gastroenterological Surgery, Gunma University, Graduate School of Medicine

群馬大学大学院医学系研究科総合外科学講座
〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22
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FAX:027-220-8230

群馬大学医学部附属病院外科診療センター消化管外科
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