当 院 で 導 入 :世 界 で 注 目 さ れ て い る TaTME 手 術

・TaTME手術(ティーエーティエムイー手術)とは・・・
Transanal total mesorectal excision(経肛門的全直腸間膜切除術)の略で、肛門操作によりTME(直腸間膜切除)を行う手技のことです。 肛門から手術操作を行うため、腹部からの手術のみでは難しい直腸病変の手術がやりやすくなり、癌の根治度を落とさず、ぎりぎりまで肛門温存ができる可能性があります。そのため、世界で注目されている手術方法です。 TaTMEは最新の直腸外科手術法で、国内の普及率は約5%程度であり、限られた施設のみで行われています。


・TaTME手術導入に至るまで
TaTME手術導入までに、 国立がん研究センター東病院TaTMEセミナー、第8回札幌医科大学腹腔鏡手術手技セミナー、第37回JSES手術見学プログラムTaTMEセミナーに参加し、トレーニングボックス(Mai-trainer;メイトレーナー)を使用したトレーニングやカダバートレーニング(ご遺体を使用した手術手技トレーニング)を行い準備してきました。 2020年に臨床倫理専門委員会に申請・登録し、今回TaTME手術を当科で導入しました。


・TaTME手術の開始
国立がん研究センター東病院 大腸外科の伊藤雅昭先生に手術指導いただき、TaTME手術を当科で開始しました。 国立がん研究センター東病院 大腸外科は、国内でも最も多くのTaTME手術件数の実績を持ちます。

手術操作や注意すべきポイントを教えていただき、安全に手術を行うことができました。患者さんの術後経過や癌の根治性も問題ありませんでした。

・TaTME手術の適応となる病変
TaTME手術の適応となる病変の目安は下記としています。
・直腸病変(直腸癌、直腸GISTなど)
・肛門縁から10cm以内
骨に囲まれた骨盤内にある直腸の手術は難易度が高く、特に肛門に腫瘍が近い症例や腫瘍の大きい症例、骨盤の狭い症例、肥満の症例はさらに手術操作が難しくなりますが、 肛門から手術操作を行うため、腹部からの手術のみでは難しい直腸病変の手術がやりやすくなり、癌の根治度を落とさず、ぎりぎりまで肛門温存ができる可能性があります。

・TaTME手術の展望
1チームでTaTME手術を開始しましたが、今後は外科医がおなか側とお尻側の2チームに分かれて、それぞれ同時に手術する2チームのTaTME手術を予定しています。これにより、別々の術野から手術操作を確認することで安全性を担保でき、さらに手術時間を短縮できるため、さらに負担の少ない手術を患者さんに提供できると考えています。